天草未来大橋

 熊本県では熊本都市圏と天草地域を90分で結ぶ構想の実現に向け、自動車専用道路として「熊本天草幹線道路」の整備に取り組んでおり、その一部区間となる天草未来大橋は天草上島と下島を結ぶ新たな道路として令和5年2月25日に開通しました。

 これまで天草の上島と下島を結ぶ橋梁は「天草瀬戸大橋」の1本だったため、通勤時間帯や休日には慢性的な渋滞が発生するという状況でした。また、交通事故の発生や自然災害で橋が通れなくなると島が孤立してしまうことが懸念され、緊急時の物資輸送やライフラインの確保、緊急医療の確保が課題となっていました。

 そのような中、平成29年10月に工事着手し、約5年という短い期間で橋長1,148mにおよぶ天草未来大橋の開通に至りました。

 天草未来大橋の特徴として、鋼桁の色が挙げられます。天草の青い海や空になじむ明るいブルーをイメージした色彩となっています。また、橋脚の形も特徴的で、周辺環境に馴染むようにコンパクトな橋桁との一体感をもとめ、張出し部がイチョウ型となっています。これらは「海と山の織りなす本渡の風景と調和し、天草の次代を担う橋」という景観コンセプトのもと建設されました。

 天草未来大橋の供用により交通混雑の緩和や道路の多重性確保に寄与するなど利便性が向上することで、これからも永く地域の皆様に親しまれ、利用され続けることを期待しています。

※写真提供:熊本県

橋梁概要

路線名国道324号(本渡道路)
所在地熊本県天草市港町~志柿町地内
橋長1148.0m
構造形式PC5径間連続中空床版橋+鋼4径間連続細幅箱桁橋+
鋼4径間連続細幅箱桁橋+鋼3径間連続鋼床版箱桁橋+
PC6径間連続中空床版橋+PC5径間連続中空床版橋+PC単純中空床版橋
設計荷重B活荷重
支間長100.0m

所在地

※九州橋梁・構造工学研究会会報 第16号発行時(令和7年3月)の情報です。

西瀬橋

 西瀬橋は、熊本県人吉市と同県水俣市を東西に結ぶ主要地方道人吉水俣線が一級河川球磨川を渡河する橋梁です。令和2年7月豪雨では球磨川流域に線状降水帯が形成され、橋梁の流出や道路が寸断するなど甚大な被害をもたらしました。西瀬橋においても、4径間のうちP2-P3間の1径間が流出しました。

 甚大な被害が出たことにより、西瀬橋を含む流出した橋梁10橋及び球磨川両岸道路約100kmにおいて国の権限代行によって災害復旧事業に着手することになりました。

 西瀬橋は人吉市の市街地部と西瀬小学校を結ぶ通学路となっており、迂回路となる市道は遠回りになる上に狭い箇所や線形不良区間があるなど安全性に課題があり、西瀬橋の早期復旧が望まれていました。

 被災した時期が7月であったため、小学校の二学期が始まる前に西瀬橋が利用できるよう応急組立橋を活用し、二学期の始まる令和2年9月4日に仮橋にて開通することができました。本復旧においては、専門的な学識経験者等により構成された「球磨川橋梁復旧技術検討会」において原位置復旧を確認し、早期に設計を実施するとともに、令和5年の冬休み期間中に仮橋を撤去し流出した1径間の新橋を一括で架設することにより、同年1月の三学期が始まる前に歩道部を完成させ通学路を確保しました。同年2月には車道部を含めて西瀬橋の本復旧が完了し、被災前と同じ姿の西瀬橋として皆様に利用していただけることとなりました。

※写真提供:国土交通省 九州地方整備局

橋梁概要

路線名主要地方道人吉水俣線
所在地熊本県人吉市相良町字1丁田~人吉市矢黒町字西ノ園
橋長174.0m
構造形式鋼4径間単純トラス橋
設計荷重TL-14
支間長最大42.21m

所在地

※九州橋梁・構造工学研究会会報 第15号発行時(令和6年3月)の情報です。

田口橋

 一般県道御船甲佐線は、熊本県上益城郡御船町から甲佐町に至る路線です。田口橋はこの路線が一級河川緑川を渡河する箇所に位置し、平成28年4月の熊本地震により橋の上部工が移動・衝突したためPC桁が大きく破損し、橋脚・橋台には断面欠損やひび割れが発生しました。

 復旧にあたっては、幅員狭小による交通混雑の解消や再度被災防止のため、改良復旧事業を適用しました。上部工は鋼4径間連続鋼床版箱桁を採用し、桁の連続化や橋脚の巻立補強等により橋梁の耐震性能を向上させるとともに、幅員を拡幅することで利便性の向上を図りました。

 工事については早期に完了させるため、河川でも通年施工可能な送り出し工法により架設作業を行い、令和元年8月に供用を開始しました。

 田口橋は被災部分を単に復旧するのではなく、幅員を従来の1車線から2車線に拡幅する等の創造的復興に取り組みました。これにより、安全で円滑な車両の往来が可能となり、通勤・通学等の生活道路として、また、地域農産物の輸送などの物流道路として地域の更なる発展に寄与することを期待しています。

※写真提供:熊本県

橋梁概要

路線名一般県道御船甲佐線
所在地熊本県上益城郡甲佐町田口
橋長262.6m
構造形式鋼4径間連続鋼床版箱桁橋
設計荷重B活荷重
支間長最大32.6m

所在地

※九州橋梁・構造工学研究会会報 第12号発行時(令和3年3月)の情報です。

新阿蘇大橋(仮称)

 国道325号は熊本県と大分県を結ぶ国道57号から分岐して宮崎県高千穂町につながる道路であり、物流や観光など交通ネットワークの重要な役割を担っています。

 このうち、平成28年4月に発生した熊本地震により落橋した阿蘇大橋を含む約1km区間について、国の直轄代行により令和3年3月頃の開通を目指し復旧を進めています。

 阿蘇大橋の架け替えにあたっては、斜面崩壊や周辺斜面の影響を回避でき南阿蘇村内のコミュニティー確保にも寄与することなどを考慮し、元の位置から約600m下流側に架け替えを行うこととしました。

 また、橋梁形式の選定について渡河部は斜面上部の端支点が移動しても自立可能なPC3径間連続ラーメン箱桁橋、推定活断層を跨ぐことになるアプローチ部は、断層変位に対して容易には落橋しないよう配慮し、鋼3径間連続鈑桁橋及び鋼単純箱桁橋を採用しました。

 道路機能の早期復旧の観点から工期短縮に資する施工技術を採用し、昼夜問わず復旧にあたっている施工業者や関係機関等と連携しながら、一日も早い復旧に努めています。

※写真提供:国土交通省 九州地方整備局

橋梁概要

路線名国道325号
所在地熊本県阿蘇郡南阿蘇村大字立野~河陽
橋長525.0m
構造形式鋼3径間連続鈑桁橋+鋼単純箱桁橋+PC3径間連続ラーメン箱桁橋
設計荷重B活荷重
支間長最大41.0m、最大61.9m、最大165.0m

所在地

※九州橋梁・構造工学研究会会報 第12号発行時(令和3年3月)の情報です。

九折瀬橋

 一般国道445号は、熊本県熊本市中央区から人吉市に至る路線で、このうち八代市泉町椎原から球磨郡五木村大平の区間は川辺川ダム事業に伴う付替道路工事に併せて幅員狭小・線形不良の隘路区間を解消し、安全で円滑な交通の確保を目的に昭和57年度から全体延長10km、幅員7.0m(2車線)の道路改良工事を進めてきました。

 九折瀬橋(つづらせはし)は、一級河川球磨川水系川辺川を跨ぐ橋長105.0mの橋梁です。上部工は鋼単純下路式ニールセンローゼ橋を採用し、吊り材にケーブルが使用されているためオープンな視界が確保され、アーチの曲線により美観に優れていることやアーチの主構面を互いに傾斜させるバスケットハンドル形式にすることで耐震性の向上および上横構部材の短縮による工事費の低減を図りました。

 また桁の防食仕様については塗替サイクルに着目し、塗り替えが必要な塗装ではなくメンテナンスフリーの耐候性鋼材を採用することでライフルサイクルコストの低減を図りました。

 九折瀬橋の工事については、桁下が川辺川で谷地形となっているため、高度な技術力が必要となるケーブルエレクション工法により架設作業を行い、令和3年3月に工事が完了しました。

 当該バイパスについては現在も事業を進めており、安全で円滑な交通の確保による地域の発展に寄与するものと期待しています。

※写真提供:熊本県

橋梁概要

路線名一般国道445号
所在地熊本県球磨郡五木村九折瀬地内
橋長105.0m
構造形式鋼単純下路式ニールセンローゼ橋
設計荷重B活荷重
支間長最大103.1m

所在地

※九州橋梁・構造工学研究会会報 第13号発行時(令和4年3月)の情報です。

合志川橋

 一般県道辛川鹿本線は菊陽町辛川の国道443号を起点とし、山鹿市鹿本町の国道325号に至る延長約30kmの道路です。このうち合志川橋を含む本区間は、菊池市泗水町中心地を縦断する基幹道路としての役割を担うほか周辺の小中学校の通学路としても利用される重要な道路です。

 旧合志川橋は1942年(昭和17年)に架橋され、主桁のひび割れやコンクリートの剥離・鉄筋露出等、老朽化が著しく進行し、対策方針を検討していました。

 そのような中、2012年(平成24年)7月九州北部豪雨により流木等が旧合志川橋の橋脚に集積し、河川の水位がせき上げられたことで水が溢れ、合志川沿いの家屋等で床上・床下浸水が発生するなど被害は甚大なものでした。

 このような被害を受け、新しい合志川橋の上部工は桁厚を薄くして既設道路と同じ高さで取付けることで周辺住宅への影響を抑え、下部工は橋脚数を減らして河川の流下能力を向上させました。また、新橋は旧橋と同位置に架け替える必要があるため車道は全面通行止めにしましたが、通学路に指定されていたことから、下流側に歩行者用の仮橋を設置して歩行者の動線を確保しながら施工を進め、2022年(令和4年)9月に完成しました。

 合志川橋の供用により道路の安全性、交通の円滑性の向上に寄与し、地域の皆様に親しまれ、永く利用され続けていくことが期待されます。

※写真提供:熊本県

橋梁概要

路線名一般県道辛川鹿本線
所在地熊本県菊池市泗水町豊水地内
橋長74.0m
構造形式PC3径間連結中空床板橋
設計荷重B活荷重
支間長23.9m

所在地

※九州橋梁・構造工学研究会会報 第14号発行時(令和5年3月)の情報です。

花園高架1号橋

 熊本西環状道路は、熊本市南区砂原町と北区下硯川町までを結ぶ延長約12㎞の道路で、6箇所のインターチェンジから出入りを行う自動車専用道路です。平成29年3月に下硯川IC~花園IC間約4.1㎞が開通し、現在は花園IC~池上IC間約4.6㎞の令和7年度中開通を目標に工事を行っています。さらに、池上IC~砂原IC間約3.8㎞は令和4年度に事業化され現在、調査・設計を行っています。

 この橋梁は、土工部とトンネルの間に架かる橋長300mのPC橋です。下部工形式は逆T式橋台・矩形柱張出し式橋脚、基礎形式は深礎杭・場所打ち杭です。上部工形式は8径間ポストテンション方式PC連結コンポ橋であり架設桁架設工法で施工しました。

 下硯川IC~花園IC間の開通により、交通混雑の緩和・移動時間の短縮・商業活動支援・安心安全の向上・救急医療活動支援・防災性の向上などの効果が得られています。今後は、花園IC~池上IC間・池上IC~砂原IC間の延伸による、さらなる効果が期待されます。

※写真提供:熊本市

橋梁概要

路線名熊本西環状道路一般県道砂原四方寄線
所在地熊本市西区花園7丁目地内
橋長300.0m
構造形式8径間ポストテンション方式PC連結コンポ橋
設計荷重B活荷重
支間長最大36.5m

所在地

※九州橋梁・構造工学研究会会報 第15号発行時(令和6年3月)の情報です。

池上Cランプ2号橋

 熊本西環状道路は、熊本市南区砂原町と北区下硯川町を結ぶ延長約12㎞の自動車専用道路です。平成29年3月に下硯川IC~花園IC間約4.1㎞が開通し、現在は令和7年度中の開通を目標に花園IC~池上熊本駅IC間(池上工区)約4.6㎞を整備しています。

 熊本西環状道路と一般道をつなぐインター線の一部であるCランプ2号橋は橋長197mの鋼5径間連続非合成鈑桁橋で、トラッククレーンベント架設工法で施工しました。橋梁の一部が河川を跨ぐため、クレーン設置箇所の選定や現地状況に合わせてベント配置計画の変更を行い令和6年3月に完成しました。

 本路線の開通により、渋滞緩和や定時制・速達性の確保はもとより災害時の代替路としてもその機能が大きく発揮されることが期待されます。

※写真提供:熊本市

橋梁概要

路線名一般県道池上インター線
所在地熊本市西区池上町地内
橋長197.0m
構造形式鋼5径間連続非合成鈑桁橋
設計荷重B活荷重
支間長最大45.1m

所在地

※九州橋梁・構造工学研究会会報 第16号発行時(令和7年3月)の情報です。

水俣川橋(P4-A2)

 南九州西回り自動車道は高規格幹線道路網の一環として計画された道路であり、八代市を起点とし、水俣市、出水市、薩摩川内市を経由して鹿児島市に至る延長約142kmの自動車専用道路です。その一部を形成する芦北出水道路は熊本県葦北郡芦北町から鹿児島県出水市へ至る延長約29.6kmの道路であり、熊本県南地域と鹿児島県北地域との連携強化を図り、周辺地域の産業発展と人口の定着による地域活性化に大きく寄与することが期待されています。

 芦北出水道路の水俣ICから袋IC(仮称)間に位置する水俣川橋(P4-A2)(仮称)は、水俣市内を東西に流れる2級河川水俣川及び一般国道268号を横断する橋梁です。そのうちP4-A2間は川幅の広い水俣川を渡河する必要があることから中央径間70mを有するPC3径間連続箱桁橋を採用し、片持架設用移動作業車を用いた場所打ち張出し架設による施工を行っています。

 施工に際しては計画段階よりXR技術を利用した施工手順のシミュレーションを行うことで作業の理解度が深めながら施工性及び安全性の向上を図り、令和5年9月に完成しました。 

※写真提供:国土交通省 九州地方整備局

橋梁概要

路線名一般国道3号 芦北出水道路
所在地熊本県水俣市長野町地先
橋長310.0m
構造形式P4-A2 PC3径間連続箱桁橋
A1-P4 PC4径間連結ポストテンションT桁橋(少主桁)
設計荷重B活荷重
支間長最大70.0m

所在地

※九州橋梁・構造工学研究会会報 第16号発行時(令和7年3月)の情報です。

熊本駅東口駅前交差点立体横断施設

 本橋梁は、熊本駅東口駅前交差点に発生集中する交通の円滑な処理と、市電通りを挟んで駅の向かい側に計画されている再開発ビルや、河川親水広場への安全かつ快適な歩行動線の確保を目的として設置された立体横断施設(ペデストリアンデッキ)です。

 熊本駅周辺地域都市空間デザインガイドの「出会いの景」という空間構成コンセプトが求める“空間の抜け”を意識して、桁高を出来るだけ薄く抑える必要があったことから4つの橋台、橋脚と一体(ラーメン)構造を採用し、全方向に高次不静定な構造物として耐震性に優れた薄い鋼床版箱桁としています(4叉式上下部一体構造の3次元断面の鋼床版箱桁橋)。

 意匠デザインは東口駅前広場の設計者である世界的建築家の西沢立衛氏による監修を受け、市電電停上屋(大屋根)と共に描くゆるやかな曲線の美しさは熊本の玄関口として新しい顔となっています。

橋梁概要

路線名都市計画道路熊本駅帯山線(県道熊本停車場線)
所在地熊本県熊本市春日
橋長(北側)86.8m、(南側)101.4m
構造形式上下部一体鋼ラーメン橋(鋼床版箱桁橋)
設計荷重
支間長(北側)37.2m+49.6 m、(南側)61.4m+40.0m

所在地